市民の心肺蘇生、AED使用は2% 08年、消防庁調査                 
【朝日新聞】
201013


 突然、心停止した人を市民が目撃した際に、心臓に電気ショックを与えて救命するAED(自動体外式除細動器)を実際に市民が使ったケースは、2008年の1年間で2%にとどまっていた。総務省消防庁の全国調査でわかった。関係団体は、設置数が急増する一方で、周知が進まず、使用に不安を抱く人も多いことなどが原因とみている。

 AEDは04年から一般市民の使用が可能となった。


 消防庁が全国の消防本部や消防局からデータを集めてまとめたところ、08年に心筋梗塞(こうそく)などで患者が心肺停止した6万3283件のうち、病院以外の一般市民の前で起きたケースは2万769件。 
 このうちほぼ半数の9970件で市民により心肺蘇生がなされていたが、AEDが使われたのは429件(2.1%)にとどまっていた。05年の46件に比べると10倍近く増えていたが、まだ使用率は低い。

 消防庁によると、AEDを使わなかった場合、患者の1カ月後の生存率は9.8%だが、使用した場合は43.8%で、4.5倍にアップする。1カ月後の社会復帰率も未使用では5.6%だが、使った場合は38.2%で、6.8倍の高率だ。調査結果について消防庁は「救急隊員が到着するまでに、少しでも早く処置をしてもらうことが救命につながる。もっと多くの人に使ってもらえるよう啓発したい」としている。

 厚生労働省研究班によると、AEDの設置台数は約20万台(08年12月現在)。医療機関や消防署以外では、市民が使える場所として公的施設や商業施設、マンションなどに約15万台ある。1台数十万円するが、自治体や、中小企業庁が「商店街活性化事業の一環」などの補助事業で普及に取り組んでいる。

 NPO法人「AED普及協会」(埼玉県熊谷市)は「設置数を考えれば、使用件数がもっと増えてもおかしくない。使う人の数が、設置数に追いついていない」と話す。使用法を学べる機会は各地の消防署で開かれる「講習会」などに限られているのが現状だ。AEDは、救命できなくても責任を問われないことが法律で定められている。「AEDを使うのに資格はいらないが、不安で使えないという人が大半。体験できる機会を少しでも増やすことが急務」と指摘する。

 兵庫県医師会では独自に「認定証」を発行して「教える人」を増やし、すそ野を広げている。中心メンバーの河村剛史医師は講習ではあえて「現場ではパニックになってください」と話すという。「必死になれば、初めてAEDを見た人でも十分使える。人を救うのはAEDではなく、使う人の『命を助けたい』という気持ち」と呼びかけている。

(染田屋竜太)