「あなたは愛する人を救えますか」
河村循環器病クリニック 院長
河村剛史

Vol.21:「健康づくりは人づくり、国のいしずえ」
  21世紀の新しい健康づくりビジョンを考える絶好の機会として第23回日本健康増進学会を開催することになりました。
  20世紀前半は結核を始めとする感染症克服の時代でしたが、戦後の経済復興による生活水準の向上は平均寿命の延長と新たな生活習慣病の増加をきたしました。誰もが生きがいを感じる健康長寿社会の実現には、今後、新しい健康づくりビジョンが求められています。
  健康づくりを考えていく上で、貝原益軒「養生訓」と福沢諭吉「学問のすすめ」に書かれた先人の思想に大いに学ぶべきものがあります。84歳で長寿を全うした貝原益軒が残した「養生訓」には、「なぜ、人間は長生きしなければならないか」の命題に、「人生にて体得した智慧を世に生かすことが、長生きしてこそ味わえる50歳からの人生の楽しみである」と書かれております。労働することが養生の秘訣であり、養生することを通して、「自らを知る」ことにつながります。生かされている命を感じ、「自分の命は、自分で守る」ことが健康の基本であります。
  福沢諭吉「学問のすすめ」に書かれている「一身独立、一国独立」には、健康維持は国民の権利ではなく、自ら実践する義務でなければ、国は滅びると述べています。まさに、「健康づくりは国のいしずえ」です。
  長寿の道は、『自立自尊』であり、80歳にして、2本足で真っ直ぐに地に立ち、好きな時好きなことができることが、長寿者の特権であり、長寿の智慧を生かすことこそが世の中を豊かにする社会づくりと考えます。

・内容の概略
1 日本を代表する「21世紀健康づくり」の論客が一同に会します。
  世界的プロジェクトである人間の遺伝子情報の解析(ゲノム解析)は2003年に完了します。ポスト・ゲノム時代を迎えて、人間は幸福になれるのでしょうか。渥美和彦東大名誉教授には、先端医療の先に「魂の健康」を求めた統合医療の世界の流れについて、久常節子慶応義塾大学教授には、厚生行政に長年携ってこられた経験がら生活習慣病予防の主役となる保健行政のあり方について、家森幸男京都大学名誉教授には、世界の食文化による人種間の体質の違いから眺めた生活習慣病につい
て、杉村隆国立がんセンター名誉総長には、がん治療の先端医療の先にあるがん予防の重要性について語っていただきます。
  兵庫県医師会主催の「健康づくりビジョン」シンポジウムでは、日本の今後求める健康指針をまとめ、広く日本に世界に情報発信したいと意気込んでおります。川口雄次WHO神戸センター所長、馬場茂明神戸大学名誉教授、そして私河村との鼎談では、21世紀に求める健康幸福感についての夢を語りたいと思っております。

2 「健康日本21」の実現に向けて、行政機関、NPO、民間団体、個人賛同者が集まるオープンな創造的学会です。
  生活習慣病予防キャンペーンを全国展開して行く上で、各種関連団体の調整役としての医者のリーダーシップが求められています。兵庫県医師会はパートナーを求め、目に見える社会啓発を行います。本学会は,こうした大きな?うねり?の震源となり、阪神淡路大震災の震源地から「健康づくりは人づくり、国のいしずえ」の健康ビジョンを発信いたします。

3 情報技術(IT)を駆使し、電脳空間(バーチャル)に情報発信するインターネット学会に挑戦します。
  本学会で話される講演内容をリアルタイムにインターネット発信します。2001年に叡智を集めた21世紀の健康ビジョンをデジタル情報にまとめ、学会終了後も発信を続け、この夢ビジョンの評価を受けたいと思っています。

続く



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